演目

さんばそう

三番叟

  寿三番叟は、能の「翁」を下敷きにした,天下太平、国土安穏、五穀豊穣を祈るお祝いの踊りです。

  田植えを舞う「揉みの段」と鈴を持って種まきを舞う「鈴の段」から成り立っています。人形浄瑠璃のほか、歌舞伎など様々な芸能の幕開けに舞い,舞台の無事を祈る意味合いを持ちます。 

ひだかがわいりあいざくら

日高川入相花王

 朱雀天皇は弟の桜木親王に王位を譲ろうとするが、それに反対するものたちに阻止され,失脚します。親王は山伏安珍として身分を隠し、追っ手から逃れます。途中,紀ノ国の豪族,真那古庄司のもとに泊まったとき,真那古庄司の一人娘,清姫と出会います。安珍は,清姫にみそめられ結婚を約束するのですが、その前夜、逃げ出してしまうのです。安珍が逃げ行く先は日高川を越えた道成寺だと知った清姫は,思いを募らせ追いかけていきます。安珍を追って日高川まで来た清姫は,安珍への思いが叶わぬことに怒り、ついには醜い怨念の権化である蛇になってしまいます。そして最後には,鐘楼の中に逃げ込んだ安珍を焼き殺してしまうのです。 

とうかいどうちゅうひざくりげ

東海道中膝栗毛

  京の都を見物に出かける道中、ところは御油の宿はずれの並木道。弥次さんが狐のお面をかぶって、先に行く喜多さんを驚かしてからかいます。日も暮れた頃、2人は卵塔場(墓場)にさしかかります。折から通りがかったお使いの帰りの子供を化け物だと思い込み,弥次さんは棒で殴ってしまいます。泣いている子供を見つけた父親は、弥次さんの胸ぐらをつかみ、こぼした酒代と子供の治療代を要求します。怖くなった喜多さんは、その間に一人で逃げてしまいます。残された弥次さんは、父親にとっちめられたあげく、気絶してしまいます。それを死んだと思った父親は弥次さんの身ぐるみをはいだあと、死に装束を着せて立ち去ります。夜中に正気に戻った弥次さんは、自分の姿を見て死んで地獄に堕ちたものと思い込んでしまいます。 

だてむすめこいのひがのこ

伊達娘恋緋鹿子 

    天和3(1683)年に放火の罪で処刑された八百屋お七の物語を、お七が放火の代わりに火の見櫓に上り,半鐘を打つという筋に改めた新趣向で人気を得た,といわれています。

「火の見櫓の段」

 高島家の臣下、安森源次兵衛の遺児吉三郎は、江戸吉祥院の寺小姓だが、主家のために行方知れずとなった天国の剣を探していました。この吉三郎と恋仲の八百屋の娘お七は万屋武兵衛がこの剣を持っていることを知り,吉三郎に知らせようとします。そして、夜中で町の木戸が開かないので,火刑を覚悟で禁制の火の見櫓の半鐘を打って木戸を開かせ,女中のお杉が武兵衛から盗み出した天国の剣を持って、吉三郎のもとへと急ぐのでした。

雪の降りしきる中,髪を振り乱したお七の美しさは見るものを陶然とさせます。

つりおんな

釣女

 狂言から常磐津により、歌舞伎舞踏化され、その後、義太夫にも直され,文楽の演目に。「松葉目物」と呼ばれるおめでたい演目です。さる大名が従者の太郎冠者を連れて良縁祈願のために西宮戎神社を訪れます。2人は祈り,そしてなぜかまどろんでしまいます。その夢のなかで、2人は釣り針を与えられます。そして、大名は1本の竿で,世にも美しい女性を釣り上げることになるのです。それを見た太郎冠者が自分もあやかろうとしますが、太郎冠者が釣り上げたのは,なかなかいないような醜女。太郎冠者はいやがりますが,醜女は太郎冠者を気に入り,積極的に迫っていきます。徹底的に醜女を避ける太郎冠者とその太郎冠者を追いかける醜女のやりとりが微笑ましい題目です。 

けいせいあわのなると

傾城阿波の鳴門

  阿波徳島の城主玉本家の家老、桜井主膳は主君から預かった銘刀を盗まれ、玉本家を追われます。その家臣である阿波の十郎兵衛とお弓は忠義のため,子供を国元に残し、さらに盗賊に身をやつし,銘刀を探します。お弓は,偶然訪ねてきた巡礼を我が子と知りながら、母親と名乗らずに別れるのです。

へいけものがたり

平家物語

  平家の山の陣の侍大将、越中前司盛俊は大臣宗盛の命令により、故清盛の弟,常盛に安徳帝と三種の神器を守護一刻も早く八島に逃れるよう告げるため,経盛の仮館に注進しにやってきました。応対に出たのは,経盛の子の無官太夫敦盛でした。盛俊は経盛が夜のうちに帝と神器を守って八島に向け出船したことを知って安堵し,敦盛にも退避をすすめて戦場に去っていきます。敦盛は経盛から別れの間際に聞かされた後白河法皇の落胤という出生の秘密と、そのため京に帰るようにとの命令を思い返しますが,今こそ報恩の時と出陣の意を決し、妻の其尾を呼び出して後生の弔いを頼みます。敦盛は悲しむ妻に佩刀の短刀を、また間もなく生まれてくる子には観音像を形見として与えます。其尾が諦めたのか筝を取り出すと敦盛も愛笛を取り出し、2人でなれそめとなった思い出の曲を演奏します。遠くに陣太鼓が聞こえ、源氏の戦陣が見えてきました。敦盛は馬をひきだします。

おぐりはんがんいちだいき

小栗判官一代記

  小栗判官政清は、流刑の身となって常陸に下ったが、相模国(相模の国)横山荘(現在の八王子市)横山殿の娘・照手姫と夫婦の交わりを結びました。
  しかし、それをこころよく思わぬ横山殿に毒を盛られ、餓鬼阿弥(身体の肉がやせ、皮ばかりになり、腹が異常にふくれた者)となる。その病気を治すために車に乗り、人々に車を引き継がれながら熊野(現在の三重・和歌山県)へと向かいます。

「親子対面矢取りの段」
  熊野権現の霊験によって病気も治り、再び都の我が家に戻ってくると、驚いたことに自分の一周忌の法要の最中でした。父・高倉大納言兼家は、小栗が本物であることを疑い、それを確かめる為に、子供の頃に教えた「矢取り」秘儀を試してみることにします。
父が弓矢を放つと小栗は難なくその矢を受け止め、高倉大納言兼家の子・小栗判官であることの証を見せ、めでたく親子対面となります。

つぼさかかんのんれいげんき

壺坂観音霊験記

  大和の国,土佐町(奈良県高市郡高取町土佐)に住む座頭の沢市は、ことや三味線の先生をしながら,美しい妻のお里と仲睦まじく暮らしていました。お里は賃仕事をして家計を支え,貧しいながらもおしどり夫婦として知られてる2人でした。ところが、沢市は、お里が毎夜、彼が寝入ると出かけていくことを知ってしまいます。もしやお里に好きな男でもできたのではないかと疑うようになるのです。が事実は,お里は沢市の目を治そうと,壷坂観音に祈願を続けていただけでした。お里のその気持ちを知った沢市は貞節な女房を疑ったことを詫び,目の治療のため,ふたりで壷坂観音に参詣することを決めるのですが…。

くずのは

葛の葉 

 「恋しくば/たずね来てみよ/泉なる/信田の森の/うらみ葛の葉」の一説で知られている演目です。別名で信田とも呼ばれています。信田の森の白狐と安倍保名が契りを結んで,安倍晴明が生まれたという説話を元にした作品です。
「乱菊」 命の恩人の安倍保名と結ばれ,子供までなした狐葛の葉だが、ふとしたことから正体を現してしまい、後ろ髪を引かれながらも信田の森へと帰っていく
「信田の森二度目の子別れ」 乳を欲しがる童子を連れ,保名と本物の葛の葉が信田の森へ迎えに来るが,狐葛の葉は堅い決意を翻すことなく、我が子に再び別れを告げると森の奥へ消えていく 

  

しょううつしあさがおばなし

生写朝顔話

 京都で儒学を学んでいた宮城阿曽次郎は、秋月弓之助の娘深雪と出会い,恋い慕う仲となります。ところが、阿曽次郎は伯父,駒沢了庵からの命により,家督を継いで鎌倉へ下ることとなり,深雪との再会を約束しつつ別れることになります。その際,深雪は再会の約束に阿曽次郎に朝顔の歌を書いた扇を渡したのでした。途中,明石の浦で再会するもまたもや、引き裂かれる2人。その後,親の勧める縁談を断り故郷を捨て、苦労と悲しみから盲目の旅芸人になってしまった深雪と阿曽次郎は島田宿で再会しますが……。すれ違いを重ねる男女の悲恋の物語です。 

そうごとじんべい

宗吾と甚兵衛 

  印旛沼の渡し場では,夜になると渡し場に鎖をかけ錠をして江戸に訴えに行った佐倉宗吾らを捕えようと、役人達は見回りを厳しくしていました。それとは知らずに宗吾は渡し場にたどり着きます。宗吾は渡し守の甚兵衛にその後の村の様子を聞き,村人を救うためには将軍に直接訴える意外にはないと決意を固めるのでした。死を覚悟した宗吾は,妻や子に別れを告げるため、我が家に行こうとします。宗吾の決意を聞いた甚兵衛は、宗吾を助けようと、自らも命を捨てる覚悟で、役人によってかけられた舟の鎖を断ち切り,舟を出して印旛沼の水神の森船着き場まで宗吾を乗せ,妻子のもとへ送ります。雪の降るなか、宗吾を見送る甚兵衛でした。 

ぢうたまいゆき

地唄舞 ゆき

  地唄の中では端唄物の名曲として最も知られ、一般にもなじまれている曲です。
  唄をたっぷりと聞かせるものだが、しんみりとした雪の夜の淋しさ、冷たさが身にしむ感じが良く出ています。
  車人形では、乙女文楽の首の操作を取り入れ、新しく考案した新車人形遣いによって、情緒たっぷりと演じます。
  雪の降る夜半に、鐘の音がしんみりと聞こえてきます。こんな人恋しい夜を、独り寝で過ごさねばならないわびしさ、哀しさに耐え切れず、女は一人で涙を流します。

ようぶ

洋舞

  洋舞は、新車人形という新しく考案された操法で演じられます。伝統的な一人遣いの車人形の技術を基本に、乙女文楽の首の操法などを取り入れたものです。
   それは、人形の両手を自由に操ることができ、本来車人形が持っていた自由な足の表現を加え、首・足・手がリズミカルな素早い動きに対応できるようになりました。 

こうやたかお

紺屋高尾

 神田の染物屋吉兵衛方の奉公人久蔵。日頃はまじめな職人だが、当時全盛の花魁高尾太夫の絵姿を見てひとめぼれし、仕事が手につかなくなってしまいます。それでも、懇意の医者から、十両あれば高尾太夫の所へ連れて行ってやると言われ、以来こつこつと働いて三年の間に十両ためます。
  晴れて初会となったが、久蔵はあがりっぱなし。高尾から長ギセルを渡され、火玉がおどるほど吸い込んでむせ返ってしまいます。
 が、相手はそんな純情さが気に入ったのか、「今度はいつ来てくんなます」とたずねると、久蔵はハラハラと涙を流し、三年間の辛抱を語ります。
 それを聞いて高尾が言うには、「私は来年三月に年季があけます。そうしたら夫婦になりましょう。そう決まったからには、もう決してこんな悪い所へ足を踏み入れてはなりません。」
  おなじみの落語「紺屋高尾」から。

のざらし

野ざらし

   落語でも有名な作品で、浅草の貧乏長屋に住む心優しいご隠居と大工の話 。
   ある日、ご隠居の清十郎は向島に釣りに出かけます。そのとき,茂みのなかに野ざらしのどくろを偶然見つけます。何かいわくがあるのだろうと気の毒に思い,持ってきた酒を注いでやり一句手向けて帰ります。するとその夜,美人の幽霊が清十郎を訪ねてきて句の徳によって成仏できたとお礼をしにきます。この話を聞いた八五郎は・・・